どうやって回収すべきか?

このページでは投資詐欺の被害回復において最も重要な回収方法について紹介します

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目次

差押一般

特に投資詐欺においては、裁判所が加害者へ判決で「加害者は被害者へ○○○万円支払え」と命じても、無視されて支払がなされないことが大半です

勝訴しただけでお金は戻ってこないのです

そのため、被害者としては、裁判所へ、裁判所に加害者の資産を差し押さえるよう、申し立てて、強制的にお金に換えて回収しなければなりません

しかも、一番の問題は、差押を申し立てる前提として、被害者(やその弁護士)が加害者の資産を見つけ出す(めぼしをつける)必要があるということです

なお、訴訟における訴状や判決と同様に、差押においては、命令書を、裁判所から加害者へ特別送達という郵便で送達してもらう必要があります

特に投資詐欺の加害者は、裁判所からの書類を受け取らなかったり、住民票と異なる場所に住んでいたりしがちなので、所在調査が必要になりがちです

命令書が通常の方法で送達できずに調査費用が必要になった場合で、特に差押のできた残高が数万円程度のようなときは、差押の取下も検討せざるを得ません

このように、判決を取得できても回収することは大変な状況ですが、如何に自由な発想の下で粘り強く回収を目指し続けるかが、重要だろうと感じています

預金の差押

預金の差押は、投資詐欺の被害回復に限らず、債権回収の最も典型的な方法です

ある銀行に債務者(加害者)名義の預金口座が開設されている場合に、預金債権(預金払戻請求権)を差し押さえることで、債権者(被害者)は金融機関に対して預金残高相当額を支払うよう請求できます

具体的な方法

振り込め詐欺救済法1条4項の「犯罪利用預金口座等」にあたる場合、同法3条に基づき、弁護士が警察と金融機関へ情報提供を行い、取引停止措置を取るように要望して、当該預金口座の口座凍結をしてもらう

民事保全法20条の要件を満たす場合、担保金を用意できるとき、弁護士が裁判所へ仮差押命令申立を行い、担保を立てて、裁判所から金融機関へ仮差押命令を発令してもらって、金融機関に当該預金口座の口座凍結をしてもらう

民事訴訟において、被害者は加害者へ○○○万円を支払えとの勝訴判決を取得する

弁護士が裁判所へ債権差押命令を申し立てて、裁判所から金融機関へ仮差押命令を発令してもらい、金融機関から債権者へ当該預金口座の預金残高相当額について支払ってもらう

なお、預金の差押においては、債権差押命令とともに転付命令も取得することが多いと思います

主な特徴

預金の差押は、他の差押と比較して、手続(債権差押命令申立)自体は、必要な書類が判決等に限られており、費用もそれほど高くないため、比較的に手軽に行えるところが魅力です

しかし、一番の問題は、預金の差押において、債務者名義の預金口座がどの金融機関のどの支店に存在するか特定する必要がありますが、債権者が債務者名義の預金口座を探しきれない、ということです

通常の企業や市民が取引先や勤務先から代金や給料などを得ているのと異なり、特に投資詐欺の加害者は、預金口座を隠匿したり使用していなかったりすることも、すくなくないようです

そこで、弁護士が弁護士会を通じて各金融機関へ債務者名義の預金口座の有無や情報を照会します
ただ、世の中には、銀行や信金、信組等、多数の金融機関が存在するため、照会には限界があります

なお、SNS型投資詐欺・SNS型ロマンス詐欺において、被害者が加害者の素性を知ることが極めて困難ですので、被害者としては口座名義人の預金を差し押さえることが、ほぼ一の被害回復の方法になります

具体例

SNS型投資詐欺・SNS型ロマンス詐欺において、送金先預金口座について、振り込め詐欺救済法に基づき口座凍結を行い、弁護士会照会で預金口座の残高や名義人の氏名・住所を把握して、訴訟提起して、訴状の送達が不能となったが所在調査を行って公示送達をしてもらって、判決を取得して、預金の差押を行ったところ、数百万円の残高全てを回収した

売掛金(加盟店契約に基づく支払金等)

売掛金の差押は、投資詐欺の被害回復ではややめずらしいですが、債権回収一般では典型的な方法です

債務者(企業)が売掛先企業から継続的な取引による売掛金の支払を受ける予定がある場合に、売掛金債権を差し押さえることで、債権者は売掛先企業に対して売掛金を支払うよう請求できます

また、飲食店等において債務者(企業)が顧客からクレジットカード等で支払を受けており、債務者と決済端末業者の間で加盟店契約があり、月末等に債務者が決済端末業者からまとめて支払を受けている場合に、加盟店契約に基づく代金債権(債権譲渡代金支払請求権や立替払金支払請求権)を差し押さえることで、債権者(被害者)は決済端末業者に対して代金(同前)を支払うよう請求できます

主な特徴

売掛金の差押も、預金の差押と同様に、手続自体は比較的手軽ですが、送達が苦労することがあります

また、一番の問題は、預金以上に、売掛金の有無や内容を把握することが容易ではないということです

もっとも、件数としては多くないものの、投資詐欺で得た金銭を元手としたのか、投資詐欺の加害者が飲食店を経営している事例もないわけではなく、インターネットで真偽不明ながら手がかりとなる情報を得ることができるかもしれませんし、飲食店については食べログ等で情報収集することも可能です

ただ、債務者がどこで店を経営しているかについて、弁護士会照会のような決まった調査方法はありません

債務者の住所や経営法人の本店所在地等を手がかりに、インターネット等で調査するくらいです

なお、投資詐欺の加害者は会社を経営してその会社で飲食店等の事業をすることも考えられますから、判決等を取得する際は、被害者の加害者(個人)に対する不法行為に基づく損害賠償請求だけではなく、被害者の加害者の経営法人に対する使用者責任に基づく損害賠償請求も、判決を取得しておくとよいでしょう

具体例

MLM型投資案件において、被害者の投資詐欺の加害者とその経営法人等に対する判決を取得したうえで、経営法人が飲食店を運営しており、決済端末業者が経営法人へ飲食代金を支払っていたことから、経営法人の決済端末業者に対する代金債権(債権譲渡代金支払請求権や立替払金支払請求権)を差し押さえた

その他の債権の債権

生命保険解約返戻金

生命保険は年齢等により簡単には契約できないため、預金と異なり、そのままになっていることがあります

問題は、生命保険の有無や内容の調査であり、以前であれば、弁護士会照会で生命保険協会が弁護士会へ全ての生命保険会社から生命保険協会への回答を取りまとめてくれる運用でしたが、現在は廃止されています

ただ、一部の銀行は弁護士会照会で弁護士会へ預金口座の有無等だけではなく一定期間の取引状況も回答してくれることがあり、生命保険料の引き落としがあれば、その保険会社について調査する価値はあります

実際にも、複数の事例で、生命保険を特定でき、解約返戻金を回収したことがあります

宅建業者の営業保証金・弁済業務保証分担金

件数としては多くないものの、特に原野商法等で投資詐欺の加害者が知事等から宅建免許を受けていることがあれば、宅建業者の営業保証金・弁済業務保証分担金についても、差押を検討することになります

とは言っても、宅建業者が法務局へ供託している営業保証金(1000万円等)は、宅建免許の取消等がなされたうえで6か月間経過しない限り、返還されるものではありません

また、宅建業者が宅建協会等へ預託している弁済業務保証分担金(60万円等)は、宅建業者が宅建協会等から退会したうえで6か月間経過しない限り、返還されるものではありません

したがって、営業保証金・弁済業務保証分担金を差し押さえることは狙ってできることではありません

しかしながら、特に原野商法等であれば、投資詐欺の加害者が知事等から宅建免許を取り消しを受けたり、廃業したりする場面も考えられますので、営業保証金等の仮差押や差押を検討することも重要です

実際にも、官報公告の記載等を手がかりに、弁済業務保証分担金(60万円等)を回収したことがあります

マルチ商法のボーナス

多くはないですが、MLM投資案件のように投資詐欺とマルチ商法は一定の親和性があるようで、投資詐欺の加害者がマルチ商法で本部からボーナスを受け取り続けている、ということがあります

加害者がどこの会社のマルチ商法に参加しているか、マルチ商法のボーナスの仕組みはどうなっているか、等については、インターネット上の情報を手がかりに勘を働かせながら突き止めていくしかありません

実際にも、マルチ商法の会社等を把握して、ボーナスを受ける権利を差し押さえたことがあります

仮想通貨(暗号資産)

暗号資産の差押についても、一部例外(コールドウォレットの場合)を除き、実行可能です

具体的には、「その他の財産権」として債務者の暗号資産交換業者に対する暗号資産移転請求権を差し押さえる方法や、「債権」として債務者の暗号資産交換業者に対する預り金返還請求権を差し押さえる方法等があります

かなり専門的な話になりますので、ここでは割愛します

不動産・車両・動産執行

不動産

不動産の差押は、投資詐欺の被害回復でも登場しますが、債権回収一般では典型的な方法です

債務者(加害者)名義の不動産(土地、建物、区分所有権)が登記されている場合に、不動産を差し押さえて競売にかけることで、債権者(被害者)は裁判所から競売手続の買受代金を配当を受けることができます

ただし、不動産の差押は、預金等の差押と比較して、手続に、公課証明書等、必要な書類が増えるだけでなく、費用も60万円等となり、差押から入札までも半年~1年かかり、手続の負担が重いのがネックです

また、債務者名義の不動産であっても、差押前の時点で住宅ローン等の抵当権が設定されていれば、差押による配当よりも抵当権が優先するため、競売自体が認められないこともあります(無剰余取消)

もっとも、不動産自体に一定程度の価値があれば、まとまった金額を回収することも可能になりますし、債務者が不動産を手放したくない場合には、競売手続の開始前後で任意の支払がなされることもあります

投資詐欺の加害者が不動産を保有しているかどうかは事例によりますが、相談時点で加害者の住所がわかれば住所の土地や建物の登記を取得して所有名義を確認することも可能なので、見通しを立てる上で参考になります

動産執行

動産執行は、裁判所の執行官が債務者の自宅へ実際に出向いて、動産を差し押さえるものです

基本的に家財については差押禁止動産とされていますので、実際には家財を差し押さえることはなかなかないと思いますが、裁判所の執行官が債務者の自宅へ突然来るというのは、心理的圧迫になるものと思われます

また、動産執行をきっかけとして、債権者が債務者の資産について手がかりとなる情報を得ることもありえますし、債務者が債権者へ支払いを申し出ることもないではないようです

交渉

振り込め詐欺救済法の口座凍結と解除

特に最近では、首謀者と口座名義人が異なるSNS型投資詐欺等が多く、預金口座を半ば使い捨てにしているため、振り込め詐欺救済法の口座凍結をしても、預金口座の口座名義人から弁護士へ口座凍結の解除を要望する連絡がくることはほとんどないように思いますが、時々、連絡があります

基本的に、金銭支払と引き換えに、口座凍結の解除を持ち掛けられても、応じていません

実際には、金銭支払の金額が高く、金銭支払を先に履行すること、口座凍結の解除は金融機関の権限であり弁護士は金銭支払の事実を報告することしかできないとしたうえで、金銭支払を受けたこともあります

刑事事件における示談交渉

SNS型投資詐欺のように口座名義人以外の加害者の素性が不明な場合には、刑事告訴等は困難です

ただ、SNS型投資詐欺ではなく、加害者の素性がある程度把握できている通常の投資詐欺であれば、民事事件として進めるのと並行して刑事事件としても告訴等を行うということも、状況次第ではありえます

実際にも、民事事件としては、訴訟提起して勝訴したものの資産が見つからない状況だったなか、刑事事件としては、最終的に逮捕・起訴されるに至ったため、加害者の弁護士から、被害者の弁護士である私へ、示談交渉の連絡があり、全額や全額に違い金額の支払をしてもらったという事例が複数あります

もっとも、逮捕・起訴されても、加害者等の資力が乏しい、執行猶予が見込まれる等で、示談交渉の連絡がなかった、極めて低廉な金額の提示しかなかった、という事例もありましたので、過度な期待は禁物です

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